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● 2011/04/10[2008/02]
『
藤沢周平さんにかかわる取材で、山形県鶴岡市を訪れた。
藤沢さんが『海坂藩(うなさかはん)』として描かれている架空藩の元は、庄内藩である。
藩主酒井家は現在も続いており、いまは酒井忠久氏が18代当主である。
庄内藩は、古くから藩校『致道館(ちどうかん)』を構えていた。
そして中国古典(漢文)の『素読』(大声を出して読む)を奨励した。
その素読がいまも鶴岡市で生きていた。
「論語抄がテキストです。
期間は5月から10月までの毎月第二・第四土曜日で、午前八時から40分まで実施しています」
酒井氏は気負いのない口調で、詳細を語ってくれた。
酒井氏が館長の致道博物館で行われている素読は、鶴岡市内の小4から中3までの生徒が対象。
夏休みの期間中の6日間は、午前5時40分から行うという。
藩校『致道館』は、一般見学ができるようにいまも開放されている。
火曜日に取材をしていたとき、致道館の一室から、こどもたちが論語を素読する声が聞こえてきた。
全員が背筋を張って、きれいに正座している。
わたしは取材中であることも忘れこどもたちの後ろ姿に見とれた。
そののち、真似して最後列で正座をした。
しかし、ものの5分と持たず、膝を崩す羽目になった。
ところがこどもたちは見事に正座をつづけた。
素読が終わったとき。足のしびれで動けないわたしを尻目に、24人の小学四年生が美しい所作で立ち上がった。
この子たちには、言葉のすり替えなどの小賢しいことは通用しない‥‥。
心底から感じた嬉しさで、しびれの痛みも消えた。
藤沢周平さんの凛とした文章。
鶴岡市をおとずれて、わけの一端を強く感じた。
』
[ ふみどころ:2012 ]
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